2015年3月1日日曜日

《和牛》と曾我廼家文童

五、六年前、まだ大阪にいた頃に《和牛》の漫才を初めて観た。ABCのお笑い新人グランプリでスマップになりたがるというネタをやっていたと思う。二人の声や風格が印象に残っている。


上京してから演芸番組や舞台を観る機会が減ったために、《和牛》のネタはそれほど観てはいない。関西で人気も実力も上がっていたのは知っていた。だから昨年の『The MANZAI』で全国に印象を残したことによって(後に松本人志がtwitterで彼らについてコメントしていた)、東京でも《和牛》の漫才を観る機会が増えるなら嬉しい。ただ、ここでは彼らの漫才についてどうこう言いたいわけではない。

よくツッコミの川西が太平かつみに似ていると弄られているが、自分も一目見たときからソックリだと感じた。しかし、彼の雰囲気が太平かつみではない誰かに似ているなとも思っていた。それが分かってスッキリしたというのが、この文章を書く理由である。その人物とはタイトルにも書いたように曾我廼家文童である。

文童について触れる前に、余談であるが、唐沢寿明主演のテレビドラマ『白い巨塔』が好きで、何度か観直している。何度観ても面白いのは登場人物のキャラクターがなんというか戯作っぽくて笑えるからだろうか。

このドラマで、似非関西弁を話す西田敏行と違って、医師会会長役の曾我廼家文童は松竹新喜劇出身で、流れるような上方弁で話す。久しく『白い巨塔』を観ていないが次に観たら、きっと文童に注視してしまうだろう。

さて、話を元に戻すと《和牛》の川西が似ているのは、松竹新喜劇で藤山寛美の相手をしていた若い頃の曾我廼家文童である。その頃の彼は今でいうイケメンというわけではないが、大阪弁でいうところのシュッとしたイイ男で、二枚目の役どころをよく演じていた。

なんとなく顔も似ているけれど、顔よりむしろ、藤山寛美という不世出のコメディアンに振り回される文童の歯切れのよい喋り方や、通りの良い少し高い声でのツッコミそのものによく似ているのだ。

こんな下らないことを考えていて、さらに気になったことがある。
よく男の声で「イイ声」なんて言われるのは、大概は低くて渋い声だと決まっている。しかし自分は《和牛》の川西や、松竹新喜劇の曾我廼家文童のような軽くて濁らずキレがある声に、「エエ声や」と聞き惚れてしまう。
まあ相方の水田の声も好きだけれど。

ただ高いから良いと言っているわけではない。男の甲高い声は好まない。

これは単にフルボディの赤ワインが好きか、辛口の日本酒が好きかという違いなだけなのか。

子供の頃に聞き覚えのある上岡龍太郎の喋りや、「中途半端やなー」のフレーズが大阪で流行った漫才コンビ《ちゃらんぽらん》の声も、高くて突き抜ける関西弁で印象的だったな。

高低よりも小気味いいリズムで聞き惚れるのが江戸言葉だとするなら、私の関西弁の嗜好は伸び上がりや余韻なんだろう。

藤山寛美と曽我廼家文童が出演している松竹新喜劇のDVDを買おうか迷っている次第。



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