パリに行きたい。
行きたいと思っても、ふらんすはあまりに遠し、である。
しかしパリに行けないからといって、新橋から虎ノ門までを歩いて「まるでシャンゼリゼを歩いているようだ」なんて感じるのは、食べ物の美味さを別の食べ物の美味さで例えて語るようで、どうにもズレている。むしろ新橋では、ニュー新橋ビルに象徴されるような、東京の背広の男達の気勢と手垢に塗れた猥雑さを感じたい。
つまり借景や見立てによって、東京都心で巴里情緒に浸るのは、これはよろしくない。
東京タワーをエッフェル塔と見て、神保町や御茶ノ水界隈をカルチェラタンと見て、都心から少し離れた明治神宮をベルサイユと見て、、、並べるとより一層よろしくない。
これは、荷風の『銀座』でとっくに語られているギクシャクした西洋趣味に通ずるものがある。東京では東京に浸り続ければよろしい。
ただ「あまりに遠いふらんす」を、都心で瞬間的に後腐れなく感じられる手段がある。温泉地の足湯のような方法、いやむしろ「ハワイの空気の缶詰」に近いかもしれない。馬鹿馬鹿しいシニフィアンによるものである。
さて、ここから、非常に雑な食べ歩きブログになる。
ビストロを巡るわけじゃない。
まずはパリの最も有名な観光地、凱旋門に行こう。かつて都心にあった日清戦争、日露戦争の凱旋門跡地に行くわけでは当然ない。
目的地は東銀座である。
ここは、夜はカラオケパブのようだけれど、ランチの時間はライスカレーが食べられる。値段の割に非常にボリュームがある。
なにより、昼のカラオケパブは防音設備のためにかえって静かでよい。喧騒遠く、寛げる。
恋人を連れ立ってはいないけれど、次に向うのはポンヌフである。ポンヌフは新橋の高架下にある。
そもそも新橋が「新しい橋」だから、この屋号なのか。
恋人を連れ立って、あたしゃあなたのそばがいい、とそばを啜るの一興だけれど、デートで行くべきではないと思う。
彷徨の締めには、オペラを堪能したい。帝国劇場にも、当然歌舞伎座にも向かわない。
銀座のダロワイヨの名物ケーキ「オペラ」である。
馬鹿馬鹿しさが過ぎたように思うので、もうこれ以上はやめておこう。
ちなみに吉原にはムーランルージュという風俗店があるそうで。北という方角的にも合っているのが何とも。
続けると、パリから見たノルマンディー、都心から見る目白にはモンサンミシェルというレストランがある。有楽町でメール・プラールに行くよりは興が乗るように思うけれど、さて、どうかしら。
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