2016年6月26日日曜日

カップルの絵を特集してみる2

西洋絵画の中の、「絵的な」カップルはどんなものか。



二枚続いてカイユボットを。これを「カップルの絵」とするのもどうかしら。
「すれ違う直前」のリアルさ。現実で見る「絵的なカップル」を、絵画に還元するとしたら、この二枚が絶妙なリアリティを持っているように感じる。
カップルに焦点が合う。周りの人物は脇役で、彼らには目が向かない。だからといって、恋人たちが主役や主題というわけでもない。画家の視点に余裕が溢れすぎていて。
あと、この二枚のカップルは同じカップルだと思う。

こういった「リアリティのあるカップルの叙情性」を描くのが一番上手いのは、サージェントという画家だと思う。サージェントはこれまで並べた画家の中では一番若い。東郷青児美術館の「最後の印象派」特集に入るくらい。
彼の絵をちょっと並べてみましょう。


例えばこの『リュクサンブール公園にて』
他に調べると、

『屋外の研究』

そして『硫黄のマッチ』

これらに至って、今回の「絵的なカップルの絵」は極まったように思う。

サージェントは『エデンの園』を描いたリヴィエールと同世代、世紀末世代である。そして、リヴィエールみたいに無名の画家ではないが、ここまで並べた画家と比べて、けして高い評価を受けた画家ではない(再評価されたのは近年である)。
リヴィエールやサージェントが絵を描いた時代は、「リアル」な「恋人たち」なんて描く時代ではないのだ。

時代遅れのリアリズムがついに終わりゆく、その僅かなタイムラグの中に、神話や物語に縛られない自由な恋人たちがいたと考えると、なんか素敵ではないか。
ああ、ならば『エデンの園』というタイトルも、なんとなく腑に落ちるようである。

そして彼らはキャンバスから消えて、銀幕の中に姿を現すように。

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