魅力的な”フィクション”、聴き入ってしまう”作り話”というのは、どの程度の割合で嘘と真実を内包するのか。
『ヘイトフル・エイト』は真実とか虚構とか、そういったものを超えた”フィクション”の持つ暴力性や魅力を味わう映画である、と書いた。
逆に、面白い”作り話”にはある程度の真実が含まれるとも。
映画の終盤の、デイジー達の脅迫的な交渉で何度も出てくる、
「レッドロックにいる”15人”のギャングが吹雪が止んだらやって来る」という言葉。
最終的にマニックスは信じない。そんな仲間はハッタリである、と。
ただ”ミニーの服飾店”には御者はおらず、脅迫の中の「御者もなしに吹雪明けの雪深い道を進めるか」という言葉から、仲間が迎えに来るのは本当ではないのかとも思える。
なによりマニックスより鋭いウォーレンが、脅迫でマニックスが裏切るのではと心配するのを見ると、ウォーレンは本当に仲間がいると思っていたのではないか。
人の感情を動かす”作り話”には真実が含まれているのだ。ハッタリだって同じだろう。
「15人」と何度も出てくるということはギャングは「15人」もいない。けれども何人かは本当にレッドロックにいたのではないか。
この映画では本当かどうかなんてどうでもいいと言ったけれど、まあ少し考えてみよう。
ルース達が”ミニーの服飾店”に着いた時、待ち構えていたのは計5人である。
1人は身分に偽りのないスミザーズ将軍。3人は正体を偽った嘘吐きのギャングの部下達。そして残りの1人、ボスのジョディは床下に隠れ存在はずっと明かされない。
この人数は、この映画が提示する”魅力的なフィクション”における真実と虚構の比率に思えるのだ。
つまり、半分ちょっと(5分の3)の嘘を成立させる為に、5分の1の真実(表面上は4分の1)が必要であり、残りの少し(5分の1)はよく解らない不確かな闇の中、というのがフィクションの黄金比ではないか。
彼らがこの待ちぶせの舞台を作るチャプター5(”4人の乗客”)。
”ミニーの服飾店”での殺戮の前にジョー・ゲージが5セント5本のミントを買って、御者のジュディと話すシーン。
(ちなみにこの場面で「素敵なアクセントだが、イギリス出身か」というジョーの質問に対して、ジュディより先にオズワルドが否定する。この直後にオズワルドがブリティッシュ・アクセントを止めて似非イギリス人であることが解るが、「嘘が意外と真に迫る」というこの映画の核心が見える)
ジョー・ゲージは1本のミントを自分の口に、1本はジュディにあげて、残りの3本は包んでしまう。
そして口に咥えた1本のミントを外で捨て、カウボーイへと変装するのだ。5分の3を懐に入れた彼が”偽り”のカウボーイになる、それと同時に偽装された舞台では1人の嘘偽りない人物を加えて、1人が舞台の外に隠れるのだ。
5人のギャングが”本当に”出揃った時、その3倍の「15人」のギャングはやはりハッタリだと言える。でも、案外5人程のギャングは隠されているのではないか。
そもそも「ギャングが何人いたのか」という疑問も「マニックスは本当に保安官なのか」という疑問も含めて、劇中で明かされないことを合わせれば、この映画の5分の1くらいになりそうだ。
舌に自信ありのウォーレンが食べたシチューだって、本当はギャングがちょっと手を加えたかもしれないからね。
なによりマニックスより鋭いウォーレンが、脅迫でマニックスが裏切るのではと心配するのを見ると、ウォーレンは本当に仲間がいると思っていたのではないか。
人の感情を動かす”作り話”には真実が含まれているのだ。ハッタリだって同じだろう。
「15人」と何度も出てくるということはギャングは「15人」もいない。けれども何人かは本当にレッドロックにいたのではないか。
この映画では本当かどうかなんてどうでもいいと言ったけれど、まあ少し考えてみよう。
ルース達が”ミニーの服飾店”に着いた時、待ち構えていたのは計5人である。
1人は身分に偽りのないスミザーズ将軍。3人は正体を偽った嘘吐きのギャングの部下達。そして残りの1人、ボスのジョディは床下に隠れ存在はずっと明かされない。
この人数は、この映画が提示する”魅力的なフィクション”における真実と虚構の比率に思えるのだ。
つまり、半分ちょっと(5分の3)の嘘を成立させる為に、5分の1の真実(表面上は4分の1)が必要であり、残りの少し(5分の1)はよく解らない不確かな闇の中、というのがフィクションの黄金比ではないか。
彼らがこの待ちぶせの舞台を作るチャプター5(”4人の乗客”)。
”ミニーの服飾店”での殺戮の前にジョー・ゲージが5セント5本のミントを買って、御者のジュディと話すシーン。
(ちなみにこの場面で「素敵なアクセントだが、イギリス出身か」というジョーの質問に対して、ジュディより先にオズワルドが否定する。この直後にオズワルドがブリティッシュ・アクセントを止めて似非イギリス人であることが解るが、「嘘が意外と真に迫る」というこの映画の核心が見える)
ジョー・ゲージは1本のミントを自分の口に、1本はジュディにあげて、残りの3本は包んでしまう。
そして口に咥えた1本のミントを外で捨て、カウボーイへと変装するのだ。5分の3を懐に入れた彼が”偽り”のカウボーイになる、それと同時に偽装された舞台では1人の嘘偽りない人物を加えて、1人が舞台の外に隠れるのだ。
5人のギャングが”本当に”出揃った時、その3倍の「15人」のギャングはやはりハッタリだと言える。でも、案外5人程のギャングは隠されているのではないか。
そもそも「ギャングが何人いたのか」という疑問も「マニックスは本当に保安官なのか」という疑問も含めて、劇中で明かされないことを合わせれば、この映画の5分の1くらいになりそうだ。
舌に自信ありのウォーレンが食べたシチューだって、本当はギャングがちょっと手を加えたかもしれないからね。
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